船底形状について
船底の形状についてご紹介します。
ボートの走行性能や乗り心地などに大きく影響する船底形状によって分類します。ここではボートの船首尾船に対して垂直の断面による分類ですが、ボートの船底形状は非常に複雑な構成要素があり、この断面形状だけですべてが明確に分類できるわけではありません。
ボートを設計するデザイナーにとって、設計作業の大部分がこの船底の形状といわれるほど重要な部分です。そのボートの使用目的やそれに合わせた走行性能、全体のデザインなどを考慮しながら、そのボートに最も適した船底の形状を設計していきます。しかし、一方を優先すれば、一方が犠牲になるというトレードオフの要素が複雑に重なり合っているため、そのボートに最も適したバランスで船底形状を決定することになります。
したがって、この基本的な断面図だけで単純にその特徴を決定付けることはできませんが、その性格を示す一つの材料として、基本的な船底形状の特徴を説明します。
フラットボトム(Flat Bottom)
船底部分がフラット、若しくはそれに近い形状のものをそう呼んでいます。その形状からもわかるとおり静止時の安定性に優れ、滑走艇に用いれば高い滑走効率を発揮するが、その反面波受けた時のショックが大きくなるデメリットも併せ持ちます。
実際の船底形状として船首から船尾までフラットボトムというボートは、川や小さな湖など、ほとんど波のない静穏な水域で使用される小型ボートぐらいで、海で走行するボートの船底形状としては適したものではありません。
ラウンドボトム(Round Bottom)
ラウンドボトムは、他の船底形状のように角張ったチャイン部分の形状が無い、丸型をした船底形状です。波のある海域ではどうしてもローリング(横揺れ)が起きやすいため、キール部分にスケッグを配したり、大型のディスプレイスメントタイプのボートには、ビルジキールを取り付けてローリングを防いでいます。
基本的に横に傾いて走るセーリングヨットでは、船底の下を水がスムーズに流れることや、傾いても極端に水面下の船底形状が変化しない特性から、一般的に使用されている形状です。
ボートではタグボートタイプやクラシックスタイルのトローラータイプのボートなどの一部に使用されているぐらいです。
ストレートV(Straight Vee)
小型のプレーニングタイプのボートだけでなく、比較的大きなセミ・ディスプレイスメントタイプのボートに至るまで、非常に多くのボートで採用されている船底形状。先のラウンドボトムに対して明確にチャインが入った形状を総称してハードチャインタイプと呼んでいるが、このストレートVはその代表といえるものです。
またこのストレートV を基本として、キール部分に丸みを付けたり、分的にアレンジを施しその特性を変化させているタイプも多く、そういったものを総称してモディファイドV(Modified Vee)といい、デッドライズを浅くしたり、深くしたりしたモデーレートV(Moderate Vee)やディープV(Deep Vee)タイプ、さらにヤマハのボートの代表的なストライプと呼ばれる船底形状もこのストレートVに含まれます。
マルチハル(Malti Hull)
これまでの説明してきた船底形状がモノハル(Mono Hull)と呼ばれる船底形状に対して、通常の走行状態で、浸水部分が横方向に分かれている船底形状を総称してマルチハルと呼んでいます。
さらに左右2つに分割されたタイプは、カタマラン(Catamaran)、3つに分かれたものはトリマラン(Trimaran)といった個別の名称が付けられています。基本的にこれらのマルチハルは復元力が高く揺れにくいだけでなく、着水時のショックが分散されることからソフトな乗り心地という素晴らしい基本特性を持っています。その一方で、小型ボートでは捻れ剛性などの強度設計の難しさや、旋回時に内傾し難い特性をどう解消するかといった設計上のハードルが高いこともあって、レジャー用の小型ボートでは、モデル数が限られています。